今年6~7月のラグビー日本代表のサマーキャンペーンには、練習生を含め6名の大学生が帯同した。そのひとりが利川桐生(としかわ・とうき)。明大3年のフランカーだ。
エディー・ジョーンズヘッドコーチが若返りを図るいまのナショナルチームへ混ざったことで、心構えが変わったという。チームに戻っていた8月上旬、単独取材に応じた。
——明大では最近、利川選手が練習中によく発言するようになったと聞きます。
「そうですね。去年よりは、発言の回数は増えているかなと」
——それと日本代表に絡んだ経験は関係していますか。
「日本で一番上のレベルでラグビーをさせてもらったことは、貴重な経験になりました。得ることが多く、濃い1か月間だったと思います」
——最初は、6月23日から動き出したJAPAN XVに練習生として加わりました。ここから「濃い1か月間」が始まります。
「(招集を知ったのは発表の)1週間くらい前。大学の(神鳥裕之)監督に言われました。すごく驚きました。(日本代表およびJAPAN XVのエディー・ジョーンズヘッドコーチからは)特に何も言われていませんが、(関東大学春季大会Aグループでの)試合を見てくれていたみたいで。今年の春は、調子がよかった。一貫して高いパフォーマンスを出すことは、常に意識していました」
——7月6日、愛知・豊田スタジアム。JAPAN XVの対マオリ・オールブラックス2連戦の2試合目(○26―14)の直前でした。ウォーミングアップを終えてグラウンドからロッカールームに引き上げる際、利川選手はジョーンズヘッドコーチに握手を求められていました。
「『アップ、ありがとう』という感じです。バックアップメンバーとしてウォーミングアップだけの参加だったので、それに対して。
エディーさんはコミュニケーションを取ってくれる人でした。グラウンドの中では厳しい人ですけど、グラウンド外では私生活、大学の話を聞いてくれます。最初は僕も馴染めていなかったのですが、エディーさんが僕と明大の上の人たち——為房(慶次朗)さん、髙橋汰地(6月30日より合流)——とを繋げてくれました」
——為房選手は、昨年度まで同じグラウンドでプレーしていた先輩です。
「(代表でも)強かったです。はい」
——他に、一緒にいて印象的だった選手は誰でしょうか。
「リーチ マイケルさんはストレッチなど準備にかける時間が長く、チームのことをよく理解していました。練習中のコミュニケーションの取り方ひとつでも勉強になる。見習わないといけない点がある。
他にもいろんなリーダーの人がいましたけど、それぞれがわかりやすく伝えてくれる。多くを喋るんじゃなく、簡単なことをひとつに絞って、『まずは○○にフォーカスしてやっていこう』という言葉が本当に多かったです。それは、こっち(明大)に帰ってきて(自身が何かを話す際)も意識しています」
――日本代表としてリスタートした7月7日からイタリア代表戦翌日の23日まで、正規のスコッドとしてキャンプに帯同しています。総じて、学びになったことは。
「グラウンド外での準備がグラウンド内に反映されるとわかりました。最初のほうは、サイン(組織的な動きの合図)を頭の中で覚えて練習に取り組んでいたのですけど、1 回手首に巻いたテーピングにサインを書いてみたら、不安なく練習に臨めました。手首に書くことで(練習中に)サインを考えることへ割く時間が減り、もっと他のプレーに集中できるようになりました。これはいまもやっていて、いつ、どの状況でもサインがクリアな状態となるようにしています。また、きつい練習が続くなか、自分でリカバリーして次の練習に備えるのも大事だと思いました」
――この活動に参加する前といまとで、意識が変わったようです。
「それまでは(大学卒業後に)ラグビーを続けることについてもあまり深くは考えていなかったのですけど、あのレベルの場所に行ったことで、『ハードワークしたら、(世界に)手が届く』と思って目標を変えました。2027 年のワールドカップ(オーストラリア大会)に出て、勝つということに。
(代表側から)身体を大きくしろと言われていて、体重や筋肉量の具体的目標を定められています。いまは102キロくらいで、目指すのは106キロです。炭水化物ばかりを食べないようにして、鶏肉、魚、たんぱく質を多く摂るようにしています」
現体制にとって初となる今度のキャンペーンは、1勝4敗に終わった。利川は「まだ土台(作りの段階)」と見て、「(方針を)信じてやっていったら、絶対に結果はついてくると感じます」と展望する。
「代表では『ゴールドエフォート』という言葉がありました。ひとつの仕事で終わらせるのではなく、ふたつ、みっつと重ねていく(という意味)。それを常に意識していたら本当に動きがよくなりますし、(首脳陣に)認めてももらえる」