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【パリ五輪】サクラセブンズ、2日目は2勝。「勝利への執念伝わった」(桑水流氏)
この日、2試合で4トライの梶木真凜。写真は南アフリカ戦。(撮影/松本かおり)
2024.07.30
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【パリ五輪】サクラセブンズ、2日目は2勝。「勝利への執念伝わった」(桑水流氏)

田村一博


 一度はしおれかけたサクラの花が、息を吹き返した。
 パリ五輪ラグビー、女子2日目(7月29日)。プールCの最終戦をブラジルと戦ったサクラセブンズが39-12と快勝した。

 前日(初日)、アメリカに7-36、フランスに0-49と敗れた。初戦は相手のパワーに圧力を受け、次戦は6万6000観衆のフランスへの声援に呑まれた。
 しかし、この日は自分たちのスタイルを出した。

 ブラジルの蹴った試合開始のキックオフを確保したサクラセブンズは、右に左にボールを動かし、左サイドで勝負に出る。
 ラストパスを受けた堤ほの花がインゴールに入ったのは40秒後だった。

 このトライでチームに勢いが出た。
 2分過ぎのスクラムからボールを動かして三枝千晃が抜け出してトライ。相手反則からすぐに攻めた5分には、内海春菜子がインゴールに入った。5分55秒の梶木真凜のトライは、リスタートのキックオフボールがこぼれたところを確保して始まった。

 前日と違い、この日は、一人ひとりがより積極的に動いた。前半終了間際に1トライを許して24-5でハーフタイムを迎える。
 後半開始1分半、粘り強く攻めていたブラジルからジャッカルし、ボールを取り戻した。梶木のトライで29-5として勝負を決めた。

チーム最年少の20歳ながら思い切りプレーする西亜利沙。写真はブラジル戦。(撮影/松本かおり)

 その後に奪った2トライも、リスタートのキックオフボールを確保して攻撃が始まった。
 堤のこの日2つ目のトライは2分41秒。4分25秒に田中笑伊が奪ったトライは、チーム全体で前へ出てPKをもらい、攻め切ったものだった。
 後半も相手に1トライを許しただけで危なげなかった。

 この試合の中継を見つめた桑水流裕策氏(2016年リオ五輪、4位となった日本代表の主将/現・ナナイロプリズム福岡ヘッドコーチ)は、前日からのチームの修正がよく伝わってきたと話す。

「アタックでは、よくボールキープができていました。サポートの寄りのはやさもそうですが、ボールキャリアーが1歩でも前に、1秒でも長く立ったことで、クイックボールを出せました。結果、いい流れが生まれたと思います」

 前日の相手のようにブラジルはパワーがある相手ではなかったが、ディフェンスも整備された。
「大きくボールを動かさず、タテを突いてくることも多かったのですが、日本はよく喋り、コミュニケーションをとってダブルタックルができていました」

 前日より個々がのびのびとプレーしていたように感じた。
 例えば梶木。前2戦は「らしさ」があまり見られなかった。しかし、この試合では本来通り強気でプレー。「安定したプレーで貢献していました」(桑水流氏)。
 中村知春の存在も、仲間に安心感を与えていると感じた。

 プールステージ9位となったサクラセブンズは、12位の南アフリカと9位〜12位決定戦の初戦を戦うことになった。
 午後8時開始の試合は、南アフリカのキックオフで始まった。

 サクラセブンズはそのボールをうまくレシーブするも、ターンオーバ―されてしまう。
 左に大きく展開される。ライン際をヤンセ・ファンレンスバーグに走り切られて5点を先行された。

 しかしサクラセブンズは、前戦から高めていた集中力を維持し続けた。
 3分になろうとする頃のラインアウトから大きくボールを動かしながらサインプレー。ラストパスを受けた原わか花が約70メートルを走り切って同点に追いつく。
 ハーフタイム前にラックの上を走られて5-12とされるも、勝利への意欲は切れなかった。

 後半に入って何度もピンチがあった。
 キックを巧みに使い出した南アフリカに、自陣深くに何度も入られる。反則もあった。しかし、ゴールラインだけは割らせなかった。

 ドロップアウト後から大きくゲインして敵陣に入るシーンでノックオン。トライラインが遠く感じた時間帯もあった。
 しかし相手の攻撃に対し、しつこく、激しく守ってボールを取り返す。圧力を受けながらもパスをつなぎ、梶木がインゴール右スミに入ったのは4分52秒だった。

 10-12で残り2分。サクラセブンズの必死さが相手を上回った。
 リスタートのキックオフボールを受けて攻める南アフリカを止め続ける。ターンオーバー。最後は左サイドを梶木が走り切った(6分9秒)。
 スコアは15-12となり、やがてフルタイムの笛が吹かれた。

勝利の鐘を鳴らすサクラセブンズ。(撮影/松本かおり)

 桑水流氏は、「気持ちが伝わる試合。勝つ姿勢が最初から最後まで貫かれていました」と言う。
 勝因は接点での闘う意志だ。「攻守ともブレイクダウンでファイトしたことがいい結果につながった」と分析した。

 攻撃時にボールに絡む相手を押し込む。防御時に圧力をかけ続け、ラックからボールがこぼれ、それを拾って得点に結びつけたシーンもあった。
「ピッチに立つ7人だけでなく、12人が、やってきたことを出し切ることに集中した結果です」

 前半の原のトライは準備していたプレーを、見事に成功させた。
 リードされて無理にパスを繋ごうとするプレーが出た時間帯もあったが、「そこは中村さんなど経験のある選手たちがいて、周囲を落ち着かせていたと思います」。
 全員、全力で勝利を掴んだ。

 最終日はブラジルと9位-10位決定戦を戦う。
 プールステージで勝った相手。しかし、この日同様、持てる力を出し切ることだけに注力する。
 今大会では、勝ったチームが試合後に勝利の鐘をつくことになっている。3度目の音を鳴らして大会を終えたい。

男子同様金メダルを目指したフランス(写真)だったが準々決勝で敗退(カナダに14-19で破れる)。準決勝はニュージーランド×アメリカ、カナダ×オーストラリアとなった。(撮影/松本かおり)


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